#ナンバリング






冷えた独房の床に転がり、少年は格子の隙間から空を見ていた。流れ込んでくるプリズムは厭に眩しく、少年の麻痺した感覚を悪戯に刺激する。
独房の真正面を看守が通過した。暫く後、部屋の一番端にある独房の鍵が開けられる音がする。一人の少年が引き摺られるようにして外に連れ出され、程なくして一発の銃声が響いた。



「……白春、聞こえた?」

少年は徐に身体を起こすと、薄い壁を隔てた隣にいるであろう友人に話しかけた。数秒の間の後、掠れた声が短く返ってくる。

「……聞こえ゛た」
「そ………」


少年はそれ以上追及せず、罅割れた壁に背を預けた。同時に、痩せ細った指を折り数を数えはじめる。片手の指を三本閉じたところで、少年は友人に呟いた。


「…あと、三日だあ」
「………」
「じゃあ、お前は残り二日だね」
「…うん゛」


鍵が開かれる音がし、友人が一つ向こうの独房に移されるのが分かった。数十秒後、少年の独房の鍵も開けられ一つ隣――さっきまで友人が居た独房に移動させられる。

「はは……また近くなった。白春、居心地はどう?」
「変わん゛ね」
「……そうだね……一緒だ」


少年は、再び独房に転がった。さっきと同じように格子の隙間から零れる光に目を細め、ひとときの安息に酔う。



「………録」
「…なーに」
「お前、死ぬの怖くねえ゛か?」
「なんだよ、今さら……」
「死んだらどうなるのか、とか」
「………死んだら…死んだらパーツごとに分けられて臓器バンクに持ってかれるんだよ。残った部分は擂り潰して家畜の餌になる」
「…………」
「こうしてみると俺たちって死なないんだなあ。色んな奴の中でしぶとく生き残るんだ」
「……………」
「白春?」
「…なあ゛録、俺たちって何のために今まで生きてきたんだろうなあ」
「…………」
「録はどう思う」
「…さあ…殺されるためかな」
「……寂しい人生だったなあ゛」
「ほんと」


友人が乾いた笑声を響かせ、少年もそれにつられて笑った。



一番遠い独房に、新しい少年が押し込まれる。その光景をぼんやりと眺めながら、少年はゆっくりと目を閉じた。彼を照らす光はいつも変わらず暖かい。









世界は今日も平和だった。









fin














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