んちゃ!
貴方の心の秘密のオアシス、またの名を世界の恋人御柳です。

この間の十二支との練習試合では僕達ハッスルしまくり妙なテンションバーリバリでしたが、普段は違いますよ、ええ。至って真面目な…ゲフン、ほんの少々ホモ濃度の高い学生集団でございます。
そりゃウチは男子校ですからね、禁じられた恋愛のひとつやふたつは発生するってもんです。ぶっちゃけた話、僕も今現在同じ部活のチャーミングな先輩にぞっこんでございます。

―――体裁繕ってても仕方ないので吐きますが僕は変態です。日々おテントウさんが昇って沈むまで例の先輩とのにゃんにゃんワンワン妄想だらけ。血液下半身一挙集中めちゃんこぷっつん。そりゃまあ若いですから。開き直った変態ほど清々しいものはありません。




……ついこの間までは、そう思ってました。



客観的に見てみた変態って、あんなにも痛々しいものだったのですね。







世紀末死語辞典










―――風薫る初夏。

ようやく春の陽気も晴れ頭のイカれたアレな方々が減少してくる時節ですね。(自分もその一員だった事はナチュラルに無視しておきます)
僕は今日もおニューの鞄と共に学校へ向かい部活に打ち込むのです。

が。



「ああ゛〜んベリッキュ〜!!今日こそ俺とにゃんにゃんして欲しいング〜!」
「やーんどこ触ってる気ー!!」


出ました。何がって?やだなぁアレに決まってるじゃないですか。HENTAI。入部して数ヶ月、いい加減このあっちょんぷりけな光景にも慣れましたが僕の大脳の底に1ピコグラム程残っている良心がチクチクと胸を刺します。
一応誤解の無いように言っておきますが僕は変態であって漢字でも書き表すことが出来ない程のHENTAIじゃないです。いや同族嫌悪と言われればそれまでなんですけど。でも僕には少なくとも公衆の面前でインド人もびっくりなセクシャルハラスメントをかます程の勇気はありません。

巻き込まれないように僕がこっそりその場を離れようとした、その時でした。


「あっ、ミヤ!ちょっとどうにかして欲し気ー!!」


セクハラから逃れようとばたばたしていた録先輩が、目敏く僕の姿を認めると大声で叫びました。その瞬間僕の体内の血液は頭のてっぺんから爪先まで一気に逆流しやがります。何故かって?―――録先輩を背後からガッチリ固めているHENTAI様の視線に気付いたからですよ。

僕がおそるおそる振り返るとそこには案の定……いらっしゃいました。録先輩のキャスケットに顔の下半分を埋めながら般若の如き凄まじい形相で僕を睨んでいる方が。その両目には「殺」の二文字がありありと浮かんでいます。
録先輩をどうにかしてあげたいのは山々なんですが僕まだ15です。普通に命惜しいです。この間なんて部活中にふざけて録先輩の尻を揉んだところ、真夜中に呼び出されバッティングマシーン(時速180q)の的にされました。確かその後のレントゲン写真では胃がかなり上まで飛び出していたような気がします。死ななかったのが奇跡です。

という訳で僕はこのHENTAI様……ゲフン、久芒先輩のことが大いに苦手なのです。彼は僕のことを天敵として見なしているようなのですが、理由は分かりません。ただ、これまで僕はこの先輩からの数多の苛め、否、虐殺行為にひたすら耐え続けいつか誰か救い出してくれないかなーなんて淡い期待を抱いていたものですがどうやら永遠に期待のままで終わりそうです。
情けない事ですがウチは男子校なので、可愛らしい容姿の人間にはつい甘くなりがちなんです。恐るべし女人不足。たとえ久芒先輩が打撃練習と称して故意に僕の頭をフルスイングしたとしても、彼が「わざとやったんじゃないング…」とあの独特の語尾をつけ目を潤ませながら上目遣いでもすれば大抵の人間はイチコロです。そして僕の人生がおシャカになりかけてもちょっとしたスキンシップだろとか言われ荼毘に付されるのです。……まあ悔しくても身長184pの僕が同じことをしたら間違いなく公害として部を追われる事になりますのでこの件については諦めます。


とにかく、そういった経緯があるので僕は録先輩を助け出す訳にはいきませんでした。あたりきしゃりきのこんこんちきです。尻揉んだだけで内臓移動ですから、身体に触れあまつさえ折角の抱擁タイムから連れ去ろうもんなら全身塩漬けにされて細切れにされた挙句ヤミ市で売られるかもしれません。

後ろ髪を引かれる思いでその場から走り出した時、曲がり角から出て来た誰かと派手にぶつかりました。次の瞬間、ふんわりと清潔な牛●石鹸の香りが漂ってきます。もしや…と思い顔を上げるとそこには、愛しき某先輩の姿が!


「せ」
「屑さん大丈夫ング!?怪我はないング!?」

僕が一言発する前に、久芒先輩は録先輩を小脇に抱えたまま音速の勢いで某先輩のもとへ駆け寄りしっかりとその両手を握り締めました。そしてア●フルのチ●ワを思わせるうるうるな目で某先輩をじっと見つめます。

「良かった……害虫にぶつかるなんて災難だったングね…直ぐ部室に行って消毒するング」
「いや、別に怪我はしてな」
「駄目ング!絶対駄目ング!菌はこの季節にはあっという゛間に増殖するング!さあ屑さん゛早く行くング!」


…あの、僕の頭踏みつけながら喋り倒すより早く退いてください。なんかギシギシいってます。

まあ迂闊といえば迂闊でした。目の前の某先輩に気を取られすぎて背後の殺気に気付いていなかった僕にも非があるのです。ぐうの音も出ないうちに久芒先輩のミラクル飛び蹴りに遭い地面に沈む僕。そして麗しい先輩後輩同士の友愛を繰り広げる彼ら。僕の入り込む余地など皆無です。てか僕は害虫と菌ですか。


「…それよりも白春、お前の足の下に誰かいるんじ」
「さあ早く行くング!手遅れになったらまずいング!」


スパイクの突起で僕の頭部をぐりぐりと踏みにじった後、久芒先輩は録先輩と僕の愛しい某先輩を引き連れ去ってゆきました。あとにはボロ雑巾のようになった僕が地面に転がるのみです。


……ですがこれしきの事で僕はへこたれません。いくら久芒先輩が僕を菌と見なし某先輩や録先輩に熱気ムンムンハッスルハッスルな愛情(もとい欲情)を抱いていようと、人間である以上必ずどこかにつけ入る隙はある筈です。いやあります。いやあると信じます。僕は立ち上がり、懐から応急手当セット(既に相棒と化しています)を取り出しながら必死に策を練りました。殺られる前に殺れ、という事で僕のほうから先輩に攻撃を仕掛けるべきかと思いましたがどうしたってあの先輩に正攻法で敵うとは思えません。もし返り討ちに遭えば本気でヤミ市直行です。
かと言って他に良い奇襲方法も思い浮かばず。この時ほど僕は自らの想像力の貧困さを恨んだことはございません。



そうこうしているうちに部活が終わって帰宅する時刻になりました。え、省略しすぎ?んな事はありません。ただ単に久芒先輩からの虐待の数々を書き連ねたくないだけです。でもまあ今日はいつも通りというか平年並みというか、救急車に乗る羽目にはならなかったのでよしとします。

僕が着替えにまごついていると、運良く愛しい先輩と二人きりになることができました。まさに慈雨、神のお恵みです。僕が横目でチラチラとラブエールを送っていると、それに気付いてくれたのか先輩がふと顔を上げました。


「…そういえば、一つお前に頼みたいことがあったんだが」
「俺にですか?」


僕は思わずドキをむねむねさせました。頭の中に星の数ほどのイケナイ妄想が渦巻きます。まあ若気の至りという事で許してやってください。





「明日、白春と買出しに行ってほしいんだが」





…やられました。ケツバットどころかケツにダイナマイト投下です。いやそれでこそ僕の愛する先輩でしょう。ここはマゾゲージを最大にして臨むしかありません。


「…あの、俺たち二人だけで行くんですか」
「そうだ」
「………あの、なんで久芒先輩と俺なんすか」
「?お前達普段から仲が良いだろう。白春はいつもお前の練習に付き合ってるじゃないか」


申し訳ありません先輩、それは練習という名の殺人です。


「とにかく、宜しく頼んだぞ。メモは白春に渡してある」
「…は、はあ」
「列車を乗り継いで二時間程だ。少し遠いが」


とどめの一発、はじめました。という文を去っていく先輩の背中に見たような気がします。あろうことか列車。列車イコール駅。駅イコール列車の発着点。列車の発着点イコール久芒先輩が僕を背後から突き落としホニャララ。久芒先輩が僕を背後から突き落としホニャラライコールこれ以上は想像したくありません。




僕はふらつく足取りで部室を出ると、遺書を書くため帰路についたのでした。






fin.











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